名義貸しは金貸しに自分の名義を売って返済義務を買うことです

借金問題における名義貸しとはなんであろうか。読んで字のごとく名義を貸すこと。それは限りなく不正解に近い。名義貸しの実態は、こと借金問題においては名義売りに近い。名義貸しとは本来、無資格者が有資格者の名義を借り何らかの業務を行うことを指す、業務によっては違法となる行為である。借金問題ではその資格とはつまり「カネを借りる資格」である。本来、通常の収入があればいくばくかのカネは誰でも借りられるものだが、その資格を借りる人とはつまりカネを借りる資格を喪失した人に他ならない。そんな人に名義を「貸し」たらどうなるだろうか。結果は火を見るより明らかである。

名義を貸した(或いは売り飛ばした)以上、返済の義務は実際にカネを借りた人物ではなく名義人にあることとなる。名義貸しの報酬として、名義を借りた人物の借金のたびにその何割かのカネを貸した人物が得られるのが良くあるパターンで、貸した当人はその度に自分名義の借金が増えているにもかかわらず割のいいアルバイト程度の感覚しかないのである。そして名義を借りた人物が膨れ上がった借金に首が回らなくなり逃げ出したら──貸した人物には借金が急に現れたように感じられるかもしれないがそれまで存在に気づいていない、もしくは気づかぬ振りをしていただけなのである。

僅かなカネでその何倍、何十倍もの借金を買うこと──それが「名義貸し」の実態である。単に借金するための名義だけでなく、たとえば新しい会社の社長に形だけなってくれ、名前だけ貸してくれなどというケースも結末は同じことになる場合が多い。充分な勝算や見通しと資金があって適切に会社を興した人に、名義を借りる理由は無いからだ。ゆめゆめ注意されたい。

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